AODTコミッティーから皆様へ


 私がヤン・ヌイッツ先生の講習を受け始めてしばらくしてからのこと。質問の時間に、次のような発言をなさった先生がいらっしゃいました。

「今回初めて先生の講習会を受けて、今まで私が生徒に教えていたことが、全く間違っていたことに気付いてしまいました。これから、どうしたらよいか分からなくなってしまいました。」

と大変当惑された様子でいらっしゃいました。

私は、自分も初めて受講した時には、同じように大きなショックを受け、途方にくれたことを思い出しました。また、その場にいらした先生方の多くが同じような体験をなさったのではないか、と感じました。

すると、ヤン先生がおっしゃいました。

「例えばね、『昨日、私はこんなに素敵なものを買ってきたのよ。だから皆で試してみましょうよ!』でいいのですよ。そんな感じで、あなたの生徒に伝えようと考えてみてはいかがですか?」

 その時まで私は、自分が講習を受けるごとに、生徒に教える内容が違って来てしまう事を、少なからず後ろめたく感じていましたので、ヤン先生のおっしゃることを聞いて、肩の荷が一瞬に下りた気がしたものです。

 最近では、バレエのための解剖学の必要性が広く知られるようになりつつあります。同時に私たち、日々、バレエ、ダンスを教える仕事をしている人間にとり、気軽に参加できる勉強の場が少なく、長い時間を勉強に充てるのも難しい、という事も事実です。

 けれども、私たちが少しずつでも勉強し、それを生徒たちに伝えることで彼らが健康を保ち、楽しく踊り続けられるのなら、これほど素晴らしいことはありません。そして、それは踊りを教える先生方全てに共通する望みではないでしょうか。  

 私はまた、自分がまだ幼く、わけもなく踊る事が楽しかったときのことを思い出します。今ほどいろいろな情報が自由でなかった時代。ビデオやCDもなかったあの頃。私たちがお世話になった先生方の苦労はいかばかりだったでしょうか。

 今では、情報ばかりでなく、人の往来も当時とは違います。遥々ベルギーまで訪ねていかずとも、ヤン先生方の講習を受けられる時代です。そのような機会をつくってくださった、ゆう企画さんはじめ、御尽力いただいた皆様への感謝をあらためて感じます。 先輩方の思いを受け継ぎ、自分たちなりの勉強の成果を加え、次の時代に伝えていけたら、何よりの恩返しになると考えております。

 AODT
は研究熱心な先生方と、趣旨にご賛同いただき、貴重なお時間を割いていただいた講師の方々、そしてヤン先生、フランシス先生の温かいご協力によって、設立より3年が経ちました。

 これからも、「今日はこんなものを買って来たよ!皆で試してみよう!」と皆さんの大切な生徒さんに「お土産」を持って帰っていただけるような勉強の場にできれば幸いです。

2008年 AODTスタンディングコミッティー